健康保険法改正で傷病手当金の通算や育休中の社会保険料免除が変更に

富永労務管理事務所便り  令和3年夏号 vol.1

「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」が第204回国会で可決・成立し、6月11日に公布されており、主な改正事項をご紹介します。

◆傷病手当金の支給期間の通算化 (令和 4年 1月 1日 から施行)

傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガの療養のために体業するときで、一定の要件に該当した場合に支給されるもので、支給期間は、支給が開始された日から最長1年6カ月です。

これは、1年 6カ月分支給されるということではなく、1年6カ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も含めて1年6カ月に算入されます。

支給開始後1年6カ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給 されません。

今回の改正は、出勤に伴い不支給となった期間がある場合、その分の期間を延長して支給を受けられるように、支給期間の通算化を行うというものです。

がん治療などで入退院を繰り返すなど、療養のための体暇をとりながら働くケースなどがあることから、改正になりました。

◆任意継続被保険者制度の見直し (令和 4年 1月 1日から施行)

任意継続被保険者制度は、健康保険の被保険者が、退職した後も選択によって引き続き最大2年間、退職前に加入していた健康保険の被保険者になることができる制度です。

保険料は全額被保険者負担 (事業主負担なし)で、従前の標準報酬月額または、当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を負担します。

任意継続被保険者となった日から2年を経過したときや、保険料を納付期日までに納付しなかったとき、就職して健康保険などの被保険者資格を取得 したとき、後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき、被保険者が死亡したときのいずれかに該当するときは、被保険者の資格を喪失します。

今回の改正は、任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しや、被保険者からの申請による資格喪失を可能とするというものです。

◆育児休業中の保険料の免除要件の見直し (令和 4年 10月1日 から施行)

育児体業中の社会保険の保険料免除は、現在、月の末日時点で育児休業をしている場合に、当該月の保険料 (賞与保険料含む)が免除される仕組みです。

そのため例えば、月中に2週間の育休を取得したとしても、体業期間に月の末日を含まなければ免除の対象にはなりません。

今回の改正は、短期の育児休業の取得に対応して、育児体業期間に月末を含まない場合でも、月内に2週間以上の育児体業を取得した場合には当該月の保険料を免除するとともに、賞与に係る保険料については 1カ月を超える育児休業を取得している場合に限り免除の対象とするというものです。