富永労務管理事務所便り 平成28年春号
◆高齢者の雇用拡大を後押し
厚生労働省が、来年度から65歳以上の高齢者も新規で雇用保険に加入できるようにする方針を決めました。同省の雇用保険部会がまとめる制度改正の報告書に盛り込み、今年の通常国会に雇用保険法の改正案を提出したところです。
◆65歳前からの継続雇用者との不公平感を是正
現行の雇用保険制度では、失業したときに、65歳未満は賃金の45~80%に相当する額を最大360日分受け取ることができ、65歳以上の場合には最大50日分の一時金を受け取ることができます。ただし、65歳以上で転職したり、親会社から関連会社に転籍したりした場合、雇用保険に入ることができないため、この給付を受けることができません。
現在、65歳以上の雇用保険加入者は140万~150万人いると言われ、新規加入を認めることで、転職した人たちなどとの不公平感を是正しようというものです。
◆転職・再就職者も失業給付の対象に拡大
改正後は、雇用保険の加入に年齢制限を設けず、65歳以上の退職者については「高年齢求職者給付金」として、65歳前から継続して同じ事業主の下で働いていた人と同様に、失業前に受け取っていた賃金の最大50日分を支給します。
ただし、適用には「週の所定労働時間が20時間以上」「直近1年のうち6カ月以上被保険者であること」といった条件がつきます。65歳未満の失業給付は現行のままの方針です。
また、65歳以上については当面、労使が折半で負担する保険料を免除します。現行の制度でも64歳を超えた人の雇用保険料は労使とも免除しており、同様の扱いとなります。
◆求職者増と人手不足も背景
高齢化に伴い65歳以上の求職者は増え続け、人手不足も背景に、企業も高齢者を受け入れる環境整備に動いています。2014年度の新規求職者は46万4,901人で、前年度に比べて10.8%増え、新規求職者全体の7.8%を占めています。
ただ、今回の対象拡大で安易な受給を増やさないことも必要で、厚生労働省は給付金を申請する65歳以上の高齢者が実際に求職活動しているかなどの確認を厳しくする方針です。
◆「一億総活躍社会」実現への一環
このほか、介護休業を取る人への給付金も引き上げます。賃金の40%になっている現在の水準を67%に引き上げる方向で、給付金を増やして仕事と家庭の両立を支援します。
政府としては、今回の改正を、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」実現につなげる考えです。
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